アパレル販売職の採用業務を通して見えるあれやこれやについて書いてます。

〜アパレル採用担当の窓口から〜

アパレル販売職の採用業務を通して見えるあれやこれや

アパレル販売職で新卒採用が増える理由

 

アパレル販売職は基本的には通年採用です。

それも多くはポテンシャル採用。

最初から一定の職務遂行能力を求められるのはハイブランドや高給の派遣くらいです。

門戸が広い職種なのです。

 

ところが近年、アパレル業界では高校新卒採用に取り組んでいる企業が増えています。

もともとプロパー採用として専・短・4大新卒採用を行ってはいるのですが、販売分野のあまりの人材不足感に高校新卒者からの採用も視野に入れるようになりました。

通年採用では人材不足を埋められなくなっているのです。

また、高校新卒者という、あまり多くの価値観に晒されていない層に研修等で教育を施す方が、企業にとって効率が良いという側面もあります。

 

toyokeizai.net

こちらの記事のコメント欄も含め、新卒一括採用に対して「海外ではそんなもんねえよ」みたいな意見が散見されますが、だから何?ってくらい現場の空気はピリピリしてます。

我々の業界以外でも人材不足で危機感を持っているところはそうでしょう。

ですが、ウエメセで「ぼくがかんがえるせいろん」を吐いたところで何もならない。

既存のスタッフのことも考えて採用活動を行わないといけないのです。

 

ネームバリューのある企業が新卒一括採用をやめる理由は、大学新卒者の数がこれから減っていく、というのが一因です。

数が減り取り合いになるので、そこへの採用コストも吊り上がっていきます。

企業のブランド力を資本として通年採用に切り替える方がコストはかかりません。

いいよね、企業のブランド力!

 

アパレルメーカーは商品のブランド力を上げることに必死すぎたのかもしれません。

速やかに、働く場としてのブランド力を上げることにも尽力して欲しいなと思います。

プレミアムフライデーとアパレル販売職の関係

 

jp.reuters.com

 

単日昨年売上対比があがったとのことです。売上が目減りする一方の百貨店業界、良かったね~

どの売場が活況だったかまでは現場にいないのでわかりませんが、昭和生まれのデパートファンとしては嬉しく思います。

 

なぜこのプレミアムフライデーを実施するのか、経済産業省のHPで確認しました。

 

個人が幸せや楽しさを感じられる体験(買物や家族との外食、観光等)や、そのための時間の創出を促すことで、
(1) 充実感・満足感を実感できる生活スタイルの変革への機会になる
(2) 地域等のコミュニティ機能強化や一体感の醸成につながる
(3)(単なる安売りではなく)デフレ的傾向を変えていくきっかけとなる
といった効果につなげていく取組です。

 

プレミアムフライデー実施についてリリースされてから「午後3時退勤」が独り歩きして、シフト制労働者からはネガティブな感想が出てくることが多かった印象ですね、「俺ら帰れねーし」と。上記の実施方針がなかなか伝わっていないようです。

経済産業省の文言だとふわふわした印象なのでざっくり言い換えてみるとこんな感じでしょう。

(1)長時間労働問題へのガス抜き

(2)地域経済の活性化

(3)冷え込み続ける消費の拡大

 

ではプレミアムフライデーがアパレル販売職にどのような効果をもたらすか。

 

(1)長時間労働問題へのガス抜き→× ちっとも抜けねえ…

(2)地域経済の活性化→△ 週末と合わせた2.5連休で別のエリアに客が行ってまうで

(3)冷え込み続ける消費の拡大→△ もともと「OLタイム」と呼ばれる金曜の退勤後の売上が見込める時間帯があるんやで

 

2.5連休のお出かけニーズや、家でのんびりするライフシーンに合わせてうまく戦略を持っていければ伸びる要素があるでしょう。ですが、実際に売場に立つ人間はあまり恩恵を感じないかと思います。恩恵があるとしても、販売戦略がヒットした時の売上高のみでしょう。なんなら、金曜午後は遊ぶんだ!みたいな風潮が生まれてバイトスタッフの出勤状況が悪くなる可能性すら感じます。

 

ここで提案なのですが、小売業もこまめに定休日を設けてみませんか?商業施設それぞれに定休日を割り振り、「今日はあそこが休みならこっち行こう」となることで地域の商圏に対する消費者の意識が上がるでしょうし、定休日があることで労働条件が担保されて販売職人気がこれ以上下がらないことが期待できます。

駄目かな~

ライフステージ問題

女性従業員が多い弊社は、スタッフが妊娠すると素直におめでとうと言えない職場です。 アパレル販売職は立ち仕事だし力仕事だから、何かあったら大変、ということはもちろんあるのですが、上司達はみなこぞって「仕事頑張るって言ってたのに…」と嘆きモード。

 

戦力から外れること>>>>>>超えられない壁>>>>>>新しい命の誕生

 

あーあ、であります。

 

もちろん万年人手不足という現状で、一人でもスタッフが欠けたら大変なのは重々承知していますが、流動性の高い職場という認識があるのならそれに即したマネジメントをするべきじゃん?the正論すぎて余裕のない現場に対する無茶ぶりなのもわかってるけどさー

 まあ一番腹立たしいのはその上司の風潮に釘を刺すことができない自分ですけどね。既婚でも未婚でも、スタッフのオメデタにはおめでとうとちゃんと言いたい。

 

世間では結婚・出産までの腰掛で仕事に就く人のことを、就業意識の低い人間だと見下す風潮もありましたね。でも採用の仕事を通じて、若年フリーター層は東日本大震災を経て「来るべき何か」までの腰掛けで仕事を選んでる…?と感じるようになりました。

腰掛での就業が是になっているのでは?いつ何が起きるかわからない、というのは諦めの感情ではなく事実なのだという実感が彼らにはある。昭和生まれにはそこがどうにもわからない。皮膚感覚の違い。

 

そもそも、生まれがいつの時代であろうと、我々は病気や怪我でいつ仕事ができなくなるかわからないのです。予期できないのです。100%の避妊はありません。インフルエンザワクチンだって接種していても型が違えば罹患するのです。車の追突事故だって通り魔だっていつ遭遇するかわかりません。

 いつ誰かが離脱をせざるを得ない事態が起きても、助け合える会社でありたいものだなあと思うのでした。

或る店長

なぜ自分がアパレル販売職を志望したか。

特別好きなブランドがあったわけではないし、特別おしゃれだったわけでもない。ただ服を着る行為は生活の中で必ず必要だったし、服装によって自分がアップデートできることが好き。服を着る、というワンイシューだけで知らない人(お客様)とお話しができるのってすごいよな、というのが志望のきっかけだった。

 アパレル2社目の大手での面接でそんなことを話して無事採用に至った。しかしながら採用されたブランドは普段買いできるような価格帯でなかったため、最初のうちはこんな高いの売って大丈夫だろうか…などと貧乏人の自分は萎縮してしまい、そこの壁を超える必要があった。

今思うにその価格に見合う接客が出来ていなかっただけだろうが、その時は必死で、お客様と駆け引きをしてお買い上げいただくのだと考えた。そして、そのことを当時の店長、Iさんに言ったのだ、「接客販売ってお客様との駆け引きっすよね~」と。するとI店長は悲しそうな顔をした。未熟さは当然としても、あまりにも卑屈な自分に対して言葉が見つからなかったのかもしれない。ただ、自分はその顔を見て、これは正解じゃないんだ、と思った。

その壁を乗り越えるために、商品について、着用シーンについて、トレンドについて徹底的に学び直した。お客様の体型を見ただけで最適サイズが分かるようになった頃、その壁が乗り越えられていたようだ。いつの間にか店で一番売上が取れるようになっていった。

 その店にいたのは1年。売上高の高い店舗へ異動となりI店長は笑顔で送り出してくれた。そしてまた別の店舗でサブになった時、代理で店長会に出席する機会があった。

久しぶりに会えたI店長に「やっとこういう場で会えるようになりましたね」と言ってもらい、とても嬉しかった。

 

I店長に会ったのはそれが最後。

病気で亡くなったのだ。

あの店長会の前にI店長は闘病のため少し休職することがあった。その時期にヘルプに行ったことがある。復帰後の店長会で会い、また少しして容体が悪化し亡くなった。彼女は沖縄出身で、同郷の旦那さんは彼女の死をきっかけに彼女の遺骨とともに沖縄へ帰ってしまったため連絡も取れず、墓参にも行けずじまいだ。

 

その後、自分が店長になった時、病気で休職した時、退職した時、別の会社で仕事をする時、何かにつけては彼女のことを思い出す。特別に何か教わったわけではない。(実務面はほぼ当時のサブから教わっていたはずだ。)ただとてもいいバランスで見守ってくれていたのだと思う。

彼女は仕事に没頭するわけではなく、出身地の故郷と、家庭をこよなく愛していたし、売上高がそこそこの下位店舗だったからこそ、のびのびと仕事ができていた。その在り方が、とても心地よかったのだと今にして思う。もし仕事に過集中するような人間だったら違っていただろう。

 

気付いたら、I店長のような口調で下の子に教えている自分がいる。

I店長は今でも自分の理想の上司です。

採用難易度について

「採用コストは全体では下がっているけど採用難易度の高いところは逆に上がってるんだからな。もっと結果を出すことにこだわれ」って言われて遺憾の意を表明したいわたしだよ。全体のコストを下げるようにしているのは採用難易度の高いエリアの求人に課金するリソースを確保するためなんです。集中と選択ってやつっすよ。わかってよベイビー。

 

愚痴から入りました。ごめんなさい。

 

採用難易度は、人口が少ないエリアだけが単純に高いわけではありません。首都圏エリアは面接実施率が下がるために難易度が上がる、ということもあります。他にいくらでも仕事が選べる都会が故の結果ですね。実に気楽に応募してくださいますよ!

 

よく、応募が来ない企業は魅力がないからしょうがない、とディスプレイの向こう側の方がdisられるのですが、そもそもそこまで企業研究しているやつ、いるんすか?どの代理店もアルバイト探しの傾向について調査したデータを出していますが、それを見たことあるのかな。

ほどよい場所で、自由にシフトが組めて、そこそこの時給と仕事内容っていうのが安定したラインで、そこの価値判断はレイヤーが重なるほど多岐に渡るため決定的にこれと言った理由なんて出てこないと思うんですがね。と、見えない敵と戦ってみる。

 とりあえず郊外に出店するときは採用計画も見込んでからにしてください、とディベロッパー様にお伝えしたい所存。働き手がいない、ということはお客様の数も減るということですし。(その点リゾート地は本当に厄介で、住民が減っても外来者は多いので、居住労働者数減少により労働環境は悪化していきます。ああ恐ろしい。)

 

アパレル業界と求職者の深い河

www.senken.co.jp

どのアパレル企業も販売職の人員を確保するのに必死です。それはハイブランドもファストも同じ。でもこの記事にはびっくりしました。あまりにも内容が薄くて。

 

こうした学生に対し、「接客は自分で正解を見つけていくクリエイティブな仕事。期待を少しだけ上回る接客の継続で、顧客との強い関係性が築け、店長になると人を育て、自分も成長できる」「人に喜んでもらえ、自らの工夫で売り上げを作れ、達成感と日々変化がある」など、やりがいのある接客の仕事の魅力を強調する意見が目立った。人とのつながりが希薄な今、「生活に身近な業界で流行を生み出せる」など様々なファッションの魅力が語られた。

 

そりゃお客様から教わることいっぱいあるさ。一緒に働く仲間からも学ぶこともある。

頑張って良い仕事をすればお客様からご支持いただけるし、達成感もある。でもそれ、土日勤務を忌避する若い人たちに響く?彼ら彼女らのライフスタイルを重視した仕事の選び方に、業界はついていけてるの?

 

「人との強い関係性」とか「成長できる」とか「達成感」とか、そういったものはきちんと仕事を成さないともたらされないという因果関係を伝えずに形の無い成果物ばかり見せびらかしていると、人材不足の販売職界隈はますます足元を見られるようになるのではないでしょうか。

 

参入障壁が低いのが販売職の良いところではありますが、こと求人採用のシーンにおいては新しい切り口で求職者に伝えていかないといけないと自分は思いますよ。もしくは今のオーバーストア状況を今すぐやめるかしないと、この先もっと人材確保は厳しくなるでしょう。

 

 

アパレル販売職に応募して不採用になる人たち

実に不穏なタイトルですね…。

 

採用担当になって最初の頃は不採用通知を出すことに胸が痛んだものです。だって人手不足な業界を志望してくださった方ですよ!ありがてえありがてえ…って思うじゃないですか。中には何度も応募してくださる方もいます。

それでも!不採用にする理由があるんです。

 

①ブランド・ショップイメージに合わない

 

これは本当にしんどい。中身がどんなに素晴らしい人格者でも合わないのはしんどい。美醜なんてある程度コントロールできますし、こちらも協力させていただくつもりなのですが(始めからドンピシャな方を望むのは欲張りすぎだと思います)…まず展開サイズが着られない方はしんどい。系統が違いすぎて修正の余地の無い方もしんどい。お客様に対して失礼なほど清潔感が無い方はしんどいどころか論外。ここはもうやる気がどんなにあってもお客様視点に立って人員を揃えることが至上命題なので、揺るがないのです。

 

②希望勤務時間帯に空きが無い

 

これはもう仕方が無い。彼の隣にはもう別の彼女がいたの。土日出られないのはもう絶望しかない。週1日?仕事覚えられますか?身体、慣らすことできますか?

 

③応募資格を満たしていない

 

高校生!高校卒業以上の文字くらい読んで!ではなぜ高校生がダメなのか。30代40代のお金を落としてくれるお客様にふさわしい接客があなたがたにできますか。そして君たちは自分で思っているより個性も知性もないんだ。業務は想像以上にたくさんある。大人でもしんどいことを任せて君たちの生活リズムを壊すようなことはしたくないんだ。わかってくれ。

 

あとは履歴書をまともに書いていないとか(お客様に手紙出すときどうすんの)、面接時の態度が悪いとか(今スマホ見る必要ある?)、これは社会に出て他人とコミュニケーションをとる時の姿勢の問題ですね。アパレル関係なく。

 「またアパレル落ちたー」と言う人は①と②を本当に見直して欲しいです。お互いに時間の無駄になります。「見た目重視しやがって」というそこのあなた、やだな〜、服は見た目で選ぶでしょ?

 

ちなみに自分は1度落ちたことあります。すごく可愛らしいブランドで、書類審査は通ったのに「女の子をエスコートするつもりで接客したいです!」という勘違い発言をして落ちました。あいたた。あと王子様っぽいイメージのコーデがあいたただった。若かりし頃の思い出です…

 

人手不足だからと言って、誰でも採用するわけではないのです。お客様が快適にお買い物していただけるようにするために、最善を尽くした結果なのです。でも同時にスタッフを揃えて既存スタッフの労働環境も良くしたいジレンマ。

なんか、書いてて胃が痛くなってきました。